Behind the 2020 Tokyo

2020 Tokyo同時進行小説&オリジナル小説・エッセー・コラムをブログとYouTubeで展開しています。

覚えてますか「安井賞展」。

(2008.12,24の改訂版)

出版業界は長引く不況のイメージがありますが、
それでも年間二兆円強の市場規模が存在しています。
書籍は売上だけでは推し測れない、
社会に対する影響力を持ち合わせています。
出版不況といえども、書籍が生き残ってきたのは、
その時代の切り口や潮流を読者に示し、
未来へその概念を継承させる力が、
あったからこそでしょう。
出版物は今や、エンターテインメントメディアとしての
スタイルを確立しようとしています。
企画次第でヒット作品も生まれますが、
ミリオンセラーとなるとかなり難しい。
某TV番組でのスピリチュアル志向の出版特需は
何故こうも続くのか・・・。
金融不安が発端になって、人間の相互不信が連鎖して、
恐慌前夜の先の見えない昨今の情勢。
人々のワラにもすがりたい気持ちが、
きっとそうさせているのでしょうか。
不確実な時代での癒し志向と、
自分探しを求める人が後を絶たない。
たしかに、完成度の高い文芸作品よりも、
より実学的な書籍が売れる傾向も顕著になっています。
文壇の登竜門である、一雑誌社の興行である
芥川賞、直木賞は定着していますが、
かつての時代の波をつくる力は感じられません。

一方、洋画界の芥川賞と呼ばれていた「安井賞展」が、
40年の幕を閉じてからはや10年余。
当時では、作家を目指す人たちの具象絵画の、
一大ブランドでもありました。
安井賞展ファンでもあった
(一時は目指したこともありました)私には、
毎年西武美術館の会場に足を運ぶ楽しみもありました。
なぜならそれらの作品群が、
時代のうねりを感じ取るきっかけを
作ってくれていたからです。
回を重ねるごとに作品も大型化していましたね。
安井曾太郎氏の木炭デッサンを初めて見たときは、
デッサンの重要さと対象物への愛情を、
純粋無垢に感じ取る大切さを肌に感じていました。
そして、今日においては、
「芸術的価値」の面で見るならば、
作家のレベルも良質で高度なものとなり、
より専門化しています。
しかしながら、
「経済的価値」(マーケット)の面においては、
美術界の古い慣習やピラミッドの業界構造による
風通しの悪さもあって停滞しています。
未曾有の世界経済不安もあり、今後は、
作家にとっては死活問題になっていく危険性も孕んでいます。
時代の移り変わりとともに、
創作活動をめぐる自然環境や経済環境が変化したとはいえ、
いつの世でもアーティストには、
その時代の記憶を未来に残していく
使命があるといえるでしょう。

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